支部長よりごあいさつ


亀山充隆

このたび牧野正三前支部長の後任として情報処理学会東北支部長を務めさせていただくことになりました. 支部活動の発展に微力ながら貢献できるよう努力したいと思いますので,支部会員の皆様のご支援, ご協力をお願い申し上げます.

情報処理学会は,わが国の情報処理分野において先導的な役割を果たしていますが, 東北支部は情報処理学会の8支部の中でも2番目に古い歴史があり,これまで歴代の支部長, 役員,会員の方々の多大の努力により支部の発展に貢献されてきたことに,敬意を表したいと思います.

 情報処理分野は,今やたいへん広い領域と関わりあっています.また,社会へ与える影響も大きく情報処理技術が 身近な存在になっていることも実感するところであります.このような中で,より新しい情報技術と応用を開拓していくことは, 新たな付加価値をもつ製品開発や社会システムの構築を促していくことが重要になります. すなわち,基盤的情報科学技術の推進を図りつつ,未来の情報社会をリードすることが重要になると思われます.このためには,
1. 大学などの教育研究機関はもとより,産業界にとっても恩恵がある支部活動
2. 次世代を担う若者にも魅力を感じる情報技術とその応用の展開
が望まれます.

未来を語る上で,昨今の世間での研究開発は成果主義が問われ産業界に直結する実用性が最近重視される傾向もあります. しかし,研究資金だけでそう簡単に進展があるはずがありません.「例えば20年後に中心となる技術」のさきがけとなる ような研究を発祥させるような地道なものも重視すべきと思います.

振り返れば,今から20年前付近はどのような状況であったでしょうか. 世の中のニュースとしては,スペースシャトルチャレンジャー爆発 , チェルノブイリ原発事故など技術の暗い影やベルリンの壁崩壊などの歴史的変革があった時代でありました. 電気情報分野としては,自動車電話(電源部とアンテナ部を一つのボックスに収容して車外に持ち出される ようにしたものであるが、重さが3キログラムとかなり大型だった),ビデオレコーダハンディカム (8mm幅のビデオテープを使用した小型ビデオレコーダ) ,ワープロ,パソコンワープロソフト一太郎, 32ビットパソコンPC9800シリーズ,などが最初に出始め,また集積回路技術ではNMOSからCMOSへの変革期 でもありました.何となく,今のマルチメディア機器やワイヤレス通信の芽生え始めている雰囲気がありました. そのとき世界初の1MビットDRAM,10万画素CCDイメージセンサの試作発表やフラッシュメモリの開発もありました. しかし,現在のシステムLSIやIT社会は誰も予想はしていなかったであろう.現実を考えると,そのようなことは飛躍 があり,思いをめぐらすほどの余裕がないと共に,Mooreの法則は指導原理としてあったものの,何へ応用してよいか ということが見えない状況であったのではないでしょうか.例えば,32ビットマイクロプロセッサは開発可能であるが, 応用がないので開発する価値は疑問であるというのが主流の考えでありました.

「20年後に中心となる技術」は,「今の技術では実用性が問題である」と不透明なように見えても意外と可能性があると言えます. しかし,これだけではなく他の条件も必要であります.それは,以下の点が挙げられるかと思います.
(1) 将来の社会にとって,その応用が多大の波及効果を与える.
(2)原理的に(将来に)実現可能性があると共に潜在的利点を有する基盤技術.但し,コストなどの実用性は超越してよい.
(3)概念が今までにはない新しいものであり,できるだけ単純で,後で言われてみると当たり前に思えるようなもの.
(4)何となく面白く夢がもてるものである.
将来の発展を担う若者は,なおさら大きな夢を描いて欲しいものであると感じております.東北支部活動がこのようなことに大いに貢献することを切望しております.

亀山 充隆 東北大学大学院情報科学研究科