第275回講演会開催案内
- 演題: 「21世紀は知識社会を志向する」
- -- 知識社会の展望 --
- 講師: 木村正行(北陸先端科学技術大学院大学・副学長)
- 日時:平成10年11月19日(木)15:30〜17:00
- 場所:東北工業大学1号館3階134番教室(マルチメディア教室)
- (〒982-8577仙台市太白区八木山香澄町35-1)
- 主催:東北工業大学情報処理技術研究所
- 共催:情報処理学会東北支部
- 世話人:小島正美
- 〒982-8577 仙台市太白区八木山香澄町35-1
- 東北工業大学・通信工学科
- E-mail:
mkojima@tohtech.ac.jp
- TEL:022-229-1151内線368
- FAX:022-228-0447
- 講演の背景と要旨:
- 「21世紀は知識社会を志向することは間違いない」と云われて
いますが、その元になっているP. F. Druckerの著書” Post-Capitalist Society(
ポスト資本主義社会)”について、私なりに感動し共感した部分について、その概要
を紹介したいと思います。この著書は経営学・社会学・政治学の視点から、社会の歴
史を分析し、その趨勢を洞察した名著です。フランス語、ドイツ語、オランダ語、チ
エコ語、中国語、韓国語、日本語などに翻訳されています。北陸先端科学技術大学院
大学において、三番目の研究科を知識科学研究科とした根拠の一つにこの著書の社会
に対するインパクトをあげることが出来ます。
- 私の講演の要旨はおおよそ以下の通りです。
- まず、「21世紀は知識社会を志向する」といわれる論拠となる歴史的背景(産業
革命、生産性革命、マネジメント革命)について解説します。ついで、今日の社会は
、歴史の大きな転換期の中で、ポスト資本主義社会(知識社会)を創造しつつあるこ
とについて概説します。
- 特に、”基本的な経済資源、即ち、経済用語で言う「生産手段」は、もはや、
資本でも、天然資源でも、労働でもなく、それは知識となること。そして今や、天然資源、
労働、資本は、主として制約条件としてのみ重要な意味を持つ、つまり、それらが
なければ、知識といえども何も生み出せないが、以前と異なる重要な点は、既に今日
では、知識の効果的な適用が行われさえすれば、他の資源は何時でも手に入れられる
ような時代になってきているということ。今や、あらゆる先進国において、知識の形
成が最大の投資先であること。しかも、国や企業にとって、知識から得られる収益こ
そが競争力の決定的要因であること。”などについて説明します。
- 次に、知識が資源の中の一つではなく経済資源の中核になったという事実が、社会
の構造を根本から変える。即ち、新しい社会の力学を生み出し、新しい経済の力学を
生み出し、そして新しい政治を生み出す。その根拠の一端について概説します。
- 特に、”知識社会は組織社会であって、責任型組織を必要とすること。プラトンと
アリストテレス以降、政治理論と社会理論は、「力」に焦点を当ててきたが、ポスト
資本主義社会(知識社会)を規定し、組織する原則は、「責任」であること。各組織
そのものの内部もまた、力や指揮命令ではなく、責任を基盤に構築される、そして組
織の全ての構成員が、自らの目標、貢献、行動について責任を負う、特に組織と組織
の目標に対して自らの貢献を徹底的に考える責任を負うこと。組織のマネジメントが
目指すべきは、組織に働く人間全員を責任ある存在にすることであり、全員を「貢献
者」にすることであること。”などについて説明します。
- 最後に、”組織の機能は専門知識に生産的機能を果たさせることであり、道具や行
程や製品に対し、仕事に対し、そして知識に対し、知識を適用することであること。
したがって組織は、常に変化をもたらすように組織され、革新をもたらすように組織
されること。”などについて概説します。